情報の重要性を「見える化」したスマート農業と今後の課題
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今年は暑かったからたくさん採れた、昨年は寒かったから・・・。
「見える化」の推進でIoT, ICTの農業利用が加速され、個人によって意見の分かれる相対評価から数値による絶対評価に変わりました。このおかげで収量の変動要因を数値から判断できるようになり、どうすれば収量が良くなるかという方向が決定しやすくなりました。
ただ、あくまでしやすくなっただけで確実に収量が増える保証はありません。昨今の状況を見ているとIoT, ICTは万能選手で、これを導入すれば収量が高くなるという扱いになっていることに違和感を覚えます。
あくまで感覚的な農業から数値を使った農業になったただけなので、そこは注意してほしいですね。
そうなんですよね・・・。何事もやってみなきゃわからないし、ICTにより農業が活性化されるならそれはそれでうれしいですが、ICT入れただけでなんも良くならなかったって事態だけは避けてほしいですね。
重要なのは、何がしたいか
センサーを導入することでたくさんのデータを取ることができますが、どのデータを取りたいですか?
こう聞かれたらどう答えますか?
私なら、「測れるデータはすべて」取りたいですね。研究をやってきた人は全員同じ意見と思います。
しかし、現実問題として除外しなければならない項目も出てきます。
そうなった場合、重要になってくるのは「何がしたいか」。
やりたいことでデータが異なる
自動で温度管理を行いたい、という場合は室温だけ測定できれば十分ですが、制御部分に天窓、側窓の開閉、送流ファンが必要になります。そして、窓を開閉するということは、強風、降雨時には閉める必要があるので、雨量計または雨センサーと風速計も必要になってきます。
収量を上げたいとなると、何が収量を制限している要因なのかがわからないと上げることは難しくなります。結局ほとんどのセンサーの導入が必要になるでしょうし、費用が不足するならセンサー以外の自動制御機構は段階的に入れていくなどの計画が必要になってきます。
つまり、目的によって使うデータが違うということです。
このステップをしっかりやらないと、データが無駄になります。
見える化で問題発見
センサーを導入することで、明らかに水が足りない、肥料が足りないなどの情報が得られるので、ある程度の収量改善はできると思います。
ただ、どのくらいまで改善できるのかは導入してみないとわからないのが難点です。
改善の本番は数年後から
センサーでデータを取る前の栽培は、先人たちが長い年月をかけて作り上げてきたものです。この時期にこうしたら良くなった、こうしたら悪くなった、という試行錯誤の蓄積です。
これを現在IoTで取っているデータでやろうとすると、収量と環境データが必要になり、それらの相関を取ることで収量増の方向性が見えると思います。(逆にデータが多すぎてよくわからない、ということも研究の世界ではよくありますが。)
つまり、数年間の収量とその時の環境データがそろってから「このほうが良さそうだ」という方向が見えてくるので、今のデータがきっちりその役割を果たすようになるのは数年後からということです。それまではすべてのデータを取り続ける必要もあります。
そしてここからは試練の道。研究と同じですから、収量が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に良くなると思います。試行錯誤の時代は長いですが、これが一番楽しいところでもあるんですけどね(笑)
今やるべきことは
とにかくデータを取り続けること、やったこと、些細なこともメモを取ることです。
いつの時代もデータや情報を持っている方が強いですし、この傾向は今後より顕著になっていきます。